歯のクリーニング ~partⅡ~
2024年08月3日
前回は、歯肉(歯茎)が腫れる理由について述べました。
part Ⅱ ではクリーニングで回数がかかる理由と、クリーニング時の痛みについて説明します。
まず、歯肉が腫れている状態のことを炎症といいますが、この炎症を抑えるために段階的に処置が必要になります。
それは、炎症反応をある程度抑えてから深い部分の歯石を取るほうが、痛みを最小限に抑えることができ歯肉への侵襲も抑えられるからです。
以下、日本歯周病学会の歯周初期治療のガイドラインに沿った当医院の主な治療の流れになります。
➀歯肉縁上のプラーク(歯垢)のコントロール
②歯肉縁上の歯石除去開始
③歯肉の炎症一部消失により、更に歯肉縁下の歯石除去が可能、開始
➃歯肉の再評価
このように歯周初期治療は主に歯肉(歯茎)の上から始まり、次に歯肉縁下(歯茎の中)の治療が行われます。
この工程をいっきにしようとすると、柔らかい歯肉を傷つけてしまい歯肉退縮を必要以上におこしてしまったり、歯と歯の間の歯肉が凹んでしまったりします。
つまり、クリーニングに回数がかかるのかという点は炎症が関係しています。
この患者様は上記の➀、②の工程が終わった方です。
炎症が無い状態ですが、歯肉を少しめくると歯茎の中に歯石があります。(歯肉縁下は血液が関係しているので茶色や、黒色状)
丁寧に縁下歯石を除去することでめくっても綺麗な根面になりました。
次にこの写真の患者様はモヤがかかったように歯垢が歯面全体に沈着しています。
まず、歯垢を除去します。
すると、炎症部位がしっかり見えてきます。炎症の中に黒い影がわかるでしょうか。
これは炎症の中に縁下歯石がある為です。
歯科専用の細い器具を使用し、歯石を除去直後の状態がこの画像になります。
黒い影が無くなりました。
歯肉縁下の歯石があるから炎症が引かないという状態があるので、取れる範囲で歯肉縁下にアプローチすることもあります。
このような場合、痛みを感じやすくなります。
クリーニングといっても、処置内容は様々なことをふまえて行うので回数や、その時の炎症状態によって痛みを生じてしまうことが0にできない要因です。
次の患者さまは、歯磨きでの炎症のコントロールがしっかりできている方ですが、レントゲン写真を見ると歯槽骨(歯を支えてる骨)が無くなってきているのが分かります。
炎症がない方でも、クリーニング中に歯科衛生士は出血の状態や、根を触った感覚で歯石の有無を確認することができるので異変を感じ、写真を撮りました。
専用の器具で慎重に歯石を除去すると、歯肉内の歯石と不良肉芽(ドロドロした血液の塊)も除去できました。
除去直後の状態を見ても、患者様の歯磨きのコントロールの良さで侵襲なく処置ができています。
炎症の状態は個人差があるので必要回数は皆一律ではありません。
また、炎症が引くと今まで見えなかった歯肉縁下の歯石が歯肉の上に出てくることがあるのでしっかり除去するには時間がかかります。
できるだけ痛みなく、スムーズに歯周治療を進めていくには患者様の毎日の歯磨きで歯垢をしっかり落とすことがとても重要になってきます。
歯石になったものは私達が除去し、歯の寿命が長くなるようお手伝いが引き続きできればと思います。